無料のKritaのほうがCLIP STUDIOより優秀だった件
公開日時: 2022-08-09 02:33:58更新日時: 2022-08-10 14:06:592022年現在、日本でイラストレーション用ソフトウェアといえば、大多数の人が思い浮かべるのはクリスタ(CLIP STUDIO PAINT)でしょうか。検索エンジンからこの記事を見つけた人の中には、これからクリスタのライセンスを買おうと考えている方や、もう数千円出してクリスタのライセンスを買ってしまった方も多いのではないかと思います。
ですが、筆者がおすすめするのは(日本では無名の)Kritaです。
Krita公式サイト >
おすすめする理由は、Kritaが商用の場合も含めて完全無料だからというのもありますが、単純に、クリスタには存在しない多くの機能が搭載されているという機能面の優位性からです。(もちろん、クリスタにのみ存在する機能もいくつかあります)
筆者は、仮にクリスタのライセンスが無料で手に入るとしても、Krita一択だと考えています。
(ちなみに、ボランティアにより開発されているKritaに広告契約があるはずもなく、筆者との資本的な繋がりはありません 笑)
では、なぜここまで言い切れるのか、以下に、Kritaとクリスタを比較できるよう、(筆者が気になった)主な違いをまとめてみました。
両方のソフトにある機能
- レイヤーモードやレイヤーのクリッピングなどの各種レイヤー機能
- 鉛筆や水彩、混色などの多彩なブラシ
- ブラシやテクスチャの追加
- キャンバスの拡大縮小や回転表示
- 範囲選択と選択エリアの変形
- HSV補正やガウスぼかしなどのフィルター効果
- 文字入力
- PSDファイルの読み書き
- ショートカットキーによるブラシサイズの変更やブラシ切り替え
- Windows、Androidタブレット、Macに対応
Kritaにしかない機能
- レイヤーのサムネイルが拡大できる
Kritaでは、レイヤー名にペンを近づけると、そのレイヤーのサムネイルが描画されている部分だけ拡大表示されるため、キャラクターのアクセサリーなどの小物を描き込んだレイヤーもすぐに見つけることが可能です。
- ペンを浮かせた状態でキャンバスを移動できる
クリスタは「ペンの中ボタンを押している間移動ツールに切り替わる」という実装のため、キャンバスの移動には中ボタンを押したままペンでタブレットを擦る必要がありますが、Kritaは「ペンの中ボタンを押しながらペンを動かすとキャンバスが移動する」という実装であるため、キャンバスがスムーズに移動でき、手が疲れにくくなります。
- ペンのテールスイッチ(消しゴム)に様々なブラシを割り当てできる
クリスタは「ペンを逆さにすると消しゴムツールに切り替わる」という実装なのに対し、Kritaは「ペンの両端それぞれを別々のデバイスとして認識する」という実装であるため、Kritaでは「テールスイッチでブラシを切り替える」、「ペンの両端に異なる硬さの消しゴムを割り当てる」といった便利な使い方が可能になります。
- クローンレイヤーが使用できる
1枚のレイヤーを複数にコピーしてそれぞれに異なるレイヤー効果をかけて重ねるという表現はデジタルイラストでは頻繁に使用されますが、作業後に「元のレイヤーに塗り残しがあった」などとなった場合、コピーしたレイヤーを削除して最初からやり直す必要に迫られます。
このような場合、コピー時にクローンレイヤーを使用していれば元のレイヤーに書き込むとコピーしたレイヤーにもその変更が自動で追加されるため、大幅に手間が省けます。
- ブラシがアイコンで表示される
Kritaではブラシがカラフルなアイコンで表示されるため、スムーズに切り替えができます。
- WEBPファイルに対応している
Kritaでは、Googleが開発した最新の画像ファイル形式であるWEBPの読み込みや書き出しに対応しており、完成したイラストを高画質のままファイルサイズを圧縮して保存することが可能です。
- Linuxにも対応している
Kritaは無料のOSであるGNU/Linuxでも使用できるため、自作PCを使用したイラストレーションでは、ソフトウェアに1円もコストをかけることなく制作環境が構築できます。
クリスタにしかない機能
クリスタは定価2万円以上のEX版ではなく、一般的なPro版での比較です- 縦書き文字に対応している
Kritaは縦書き文字に対応していないため、縦書き文字は別途GIMPなどの別ソフトで追加する必要があります。
- 公式サイトからブラシをダウンロードできる
ただし、Kritaでも多くの海外サイトから様々なブラシをダウンロードすることができます。
当サイトでは、将来的に、そうした海外サイトのリンクをまとめたページを公開する予定です。
- ブラシサイズパレットを編集できる
これについては、筆者がKritaでもブラシサイズの追加・削除が可能なQuick Brush Sizeドッカープラグインを開発したことにより、現在はクリスタのみの機能ではなくなっています。
- 水彩境界効果が使用できる
Kritaには高品質な水彩ブラシが複数存在しますが、あとからレイヤー効果として水彩境界を追加することはできません。
- iPadにも対応している
自由なソフトウェアの開発を掲げるKritaでは、Appleストアによるアプリ市場独占への抗議として、iOS版の開発は凍結されています。
ただし、iOS版のクリスタは月額制のプランしかないため、あまり魅力的ではないのも実情です。
まとめ
以上のように、クリスタに比べるとKritaではレイヤー選択やキャンバス移動などの頻繁に利用する機能がより便利に使えるよう工夫されており、制作作業中のストレスが明らかに少ないというのが筆者の感想です。縦書き文字だけはクリスタに軍配が上がるというのが現状ですが、Krita同様に無料で利用できるGIMPなどであとから文字だけ追加することもできる点を踏まえると、既にクリスタのライセンスを持っている場合でも、無料のKritaに乗り換える価値は十分あるように感じられます。
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